冬の朝

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枕の下のスマホがバイブする前に目が覚めるようになったのは、マサくんと一緒に暮らすようになってからだ。 「んん……サユ?」 そっと手を伸ばしてアラームを解除したのに、隣で寝ていたマサくんを起こしてしまったようだ。 ……でも、たぶん大丈夫。彼が私を『サユ』と呼ぶのは寝呆けている証拠だから。 案の定、少しのあいだ息を潜めてじっとしていると、穏やかな寝息が聞こえて来た。 「はあっ、寒い!」 ベッドを抜け出してバスルームの小窓を開けると、冷たい風が入って来た。 夜明け前なので、外はまだ真っ暗。 浴槽の蓋を開けて栓を抜く。お湯が無くなるまでに洗濯機に洗濯物を入れてスタートさせ、浴槽をブラシで洗う。 それがこのマンションに引っ越して来てからの、私の朝のルーティンワーク。 ここはマサくんの会社の社宅だけど真新しい高層マンションで、上や隣の生活音がまったく聞こえない。だから、私も遠慮なく夜明け前から洗濯機を回せる。 日当たりが悪くてベランダに洗濯物を干しても乾かないのが難点だけど、二人分の衣類なら浴室乾燥で十分だ。 でも、もしも子どもが生まれたとしたら、全部干し切れるだろうか。それだけがちょっと気がかりだったりする。
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