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家に帰れば、広くもないリビングに分不相応なほどの大きなクリスマスツリーが私たちを出迎えた。
二週間前に二人で飾り付けた時は、そのうち子どもたちも一緒に飾り付けを楽しむようになるのだろうなんて想像していた。
点滅する色とりどりのライトさえ、今では安っぽい紛い物に見えてしまう。
マサくんが岡山にいた頃、遠距離でも私たちは大丈夫だと信じていた。
それなのに……
マサくんが二年前の浮気をずっと隠していたこと。再会した華絵さんにこっそり口止めまでしていたこと。
それらは一夜の過ちよりももっと大きな裏切りに思えた。
「サユさん、本当にごめん。でも、僕が愛してるのはサユさんだけだ。それは信じてほしい。」
「愛してるなら、どうして浮気したの? しかも相手は人妻で、旦那さんも会社の人なのに。……ちょっと考えさせて。この先どうするか。」
「この先って!? 結婚をやめるってこと?」
「それも含めてどうするか。とりあえず今日はもう遅いから出て行かないけど」
「出て行くなんて言わないでよ! どうしたら許してくれる?」
肩を掴まれそうになって、思わず身体を引いた。
マサくんに触れられるのも嫌だ。そんな感情が湧いてきて涙が零れた。
あんなに好きだったのに。どうしてこんなことになっちゃったの?
「サユさん、泣かないで。バカなことをしたって反省してる。もう辛い思いは絶対にさせないから許してほしいんだ。」
項垂れたマサくんがやけに小さく見えた。
マサくんがずっと私に言えなかったのも、たぶん今朝華絵さんを追いかけて口止めしたのも、私との関係を壊したくなかったからだ。
私だって私たちの十年がそんなに簡単に壊していいものだとは思えない。
でも、どうやって自分の気持ちと折り合いをつければいいんだろう。正直、ショックが大きすぎて、まともに考えられない。
「……少し考えさせて。お願い。」
今の私にはそれしか言えなかった。
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