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「そんな! いくら酔った勢いだったとは言え、避妊しないなんてことはなかったと思います。」
マサくんはいつもきっちり避妊具を着けていた。だからこそ私も妊娠がわかった時、マサくんではなくあの男の子どもだと確信したのだ。
私がマサくんを擁護するように語気を強めたせいか、岡崎さんは眉を顰めた。
「酔った勢いって……加納くんがそう言ったのか?」
「はい。酔った勢いで一度だけって。だから、瑛太くんは間違いなく岡崎さんの」
「紗雪ちゃん、それ違うから。あの後、俺も華絵に問い質したんだ。酔った勢いなんかじゃない。あの二人は素面で計画的に何度もセックスした。子どもを作るためにね。」
バサバサッと音がして、自分が持っていたレジ袋が落ちたのだと気付いた。
気付いたのに拾えない。
ピーッという耳鳴りがして、目の前の世界が黄色いフィルターをかけたように染まった。
岡崎さんがレジ袋を拾いながら何か言っている。でも、何も聞こえない。
やがて、真ん中の黒い点が大きくなって私を飲み込んでいった。
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