純白の心

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卵は十個中四個が無事だった。あとは割れていたり、ヒビが入っていたり。 脆い殻はマサくんと私の関係みたいだ。簡単にヒビが入って、ドロッと中から隠していた秘密が零れ出る。 クリスマスイブだから今夜はフライドチキンを作る予定だったのに、親子丼を作りながら何度も何度も考えた。 マサくんにどういう順番で話そうか。責めるように問い質したら、マサくんは話し合いを拒むかもしれない。 そもそも私はどういう結果を望んで話をしようとしているのだろう。 謝罪の言葉が欲しいだけなのか、マサくんとの別れを望んでいるのか。 大体、マサくんはどう考えているのだろう。 もしも瑛太くんがマサくんの子どもで、華絵さんが離婚して独りで育てることになったら? マサくんは華絵さんと一緒に我が子を育てたいと思うかもしれない。 そんなことをぐるぐるぐるぐる考えた。 「ただいま。お、いい匂い。」 いつもと変わらない様子で帰宅したマサくんに、お帰りなさいと呟く。 まだ私の心は決まらない。本当にマサくんと別れてしまっていいのか。 「今日はこれ。」 そう言ってマサくんがスーツのポケットから取り出したのは、クリスマスカラーの小さな箱だ。 ツリーを飾ってからというもの、マサくんは会社帰りに雑貨屋に寄ってオーナメントを買って帰るようになった。毎日一つずつだからツリーはもう満杯。 マサくんは箱からミニリースを出すと、ツリーの高いところに吊り下げた。 「クリスマスリースは丸くなっているだろ? 始まりも終わりもないから【永遠】を意味しているんだって。」 彼が箱に印刷された解説を読み上げるのもいつものこと。 「『またリースのリボンには、お互いが愛情をもち永遠の絆で結ばれますようにという願いが込められています』だって。知ってた?」 「ううん、知らなかった。私、マサくんと自分をリボンでグルグル巻きにしたかったよ。」 汚れなき清い心と身体で結ばれたい。そんな願いはとっくの昔に叶わなくなってしまっていたのにね。
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