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「サユさん? ごめん。そんなにすぐに許せるもんじゃないと思うけど」
「許してほしいって言うなら、私が何を許せばいいのか、ちゃんと教えて。『酔った勢いで一度だけ』っていうのは嘘で、本当は子作りのために素面で何度もセックスしたって聞いた。どっちが真実?」
言葉に出すのも苦しくて、声も身体も震えてしまう。それでも何とかマサくんから目を逸らさずに答えを待った。
「誰に聞いた?」
そう言って目を逸らしたのはマサくんの方だった。もうそれでどっちが本当かわかってしまった。
自分の言葉が真実なら目を逸らすことはないし、誰がそんな出まかせを言ったんだ?と怒るのが普通だろう。
「岡崎さんに聞いた。岡崎さんは華絵さんから聞いたって。華絵さんが妊娠するまで一回につき三万円をもらってセックスしてたんでしょ? 六か月間も。」
「違う!」
「そんなに子どもが欲しかった? 私が中絶したから……だから、マサくんは華絵さんとの間に子どもを作ろうとしたんでしょ? でも、私が堕ろしたのはマサくんの子じゃなかった! マサくんの子だったら、私も欲しかったよ!」
どうしても言えなかった秘密が、涙と一緒に溢れ出た。
床に崩れ落ちて嗚咽を漏らす私の横に、マサくんがしゃがみ込む。
「そんなこと、とっくにわかってた。」
驚いて顔を上げた私を、マサくんは辛そうに顔を歪めてじっと見つめた。
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