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マサくんと結婚したいと考えるようになったのは、高校を卒業してすぐの頃。
それまでは学校に行けば毎日マサくんに会えたのに、卒業した途端になかなか会えなくなって。
寂しさと不安を埋めるように、私たちは初めて身体を重ねた。
身体が満たされれば、心も満たされる。でも、身体が離れてしまえば、心は前よりもっと不安になっていた。
快楽を知ってしまったマサくんは、私と会えない時間に他の女の子で性欲を満たそうとするかもしれない。そんな心配が頭をもたげるようにさえなっていた。
たぶんそれはマサくんも同じだったのだろう。彼にとっては未知の世界である大学生活に、私は足を踏み出していたから。
『サユさん、大人になったら結婚しよう。』
そんなプロポーズの言葉からして、私たちはまだ子どもだった。
でも、幼いがゆえに純粋な想いだった。
いつか真白い教会のチャペルで純白のウェディングドレスを着て、マサくんと永遠の愛を誓い合う。
明るい日差しの下、鐘が鳴り響く中で家族や友達に祝福されて、幸せいっぱいの微笑みを交わし合う。二人の心は一点の曇りもなく、お互いの愛だけで満たされていて――
当たり前だと思っていた願いは、当たり前じゃなかった。
お互いに嘘や隠し事を重ねながら、とっくに叶わなくなっていた夢にしがみついていただけ。
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