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「そっか。紗雪ちゃんはもう吹っ切れたんだね。」
岡崎さんの言葉に微笑んでみせたけれど、吹っ切れたと言えるほど私の中のマサくんは過去になっていない。
いつか遠い思い出になる日が来るんだろうか。
どこかでマサくんとすれ違っても、胸に痛みを感じずに素知らぬ顔で通り過ぎることが出来るんだろうか。
空を見上げれば、その青さが目に沁みる。もっと私は強くならないといけないみたいだ。
「華絵さんとは離婚しなかったんですか?」
今ならあの時、嘘を吐いた岡崎さんの気持ちがわかるような気がする。
私はマサくんとのことをまだ引きずっているのに、華絵さんが旦那さんと仲良くやっているなんて理不尽な気がするから。
「うん。瑛太は俺の子どもだったし、そもそも華絵が加納くんの精子をもらおうなんてバカなことを考えたのも、俺が華絵の悩みに向き合わなかったからだしね。お互い反省して、次に生かすことにした。」
「次って……」
「実はあの頃、華絵はそろそろ二人目が欲しいと言ってたのに、俺は軽く受け流してたんだ。で、向き合った結果、先週二人目が生まれたんだよ。今度は女の子。華絵に似て美人なんだ。」
「おめでとうございます。」
「ありがとう。」
デレッとした岡崎さんを見ていたら、自分の中の黒い感情もどこかへ行ってしまった。
結局、岡崎さんたちの方が強い絆で結ばれていたということなんだろう。羨ましいけれど、妬ましくはない。
純粋に二人目の赤ちゃんの誕生を祝福できる自分に、少しホッとした。
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