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彼女は、以前も依頼をくれたことが有る女性である。
児童館で働く彼女との怪異の話は、別のお話であるが、月藻典子は喫茶店に霊媒者探偵の僕を呼び出すと、妖怪を退治して欲しいと言った訳である。
「くねゆすりですか」
喫茶フェンリル、優しくカッコイイと評判のマスターの淹れたコーヒーをチビチビと飲む。
苦いのだ。一気に飲むと気付け薬にでも成りそうな強烈な苦さ。しかし、それが癖になる。
苦いが、旨いのだ。
この店でしか飲むことが出来ないソレは、やはり知る人ぞ知る味なのだろう。もっと美味そうに飲んでくれよとマスターが笑う。
カウンター席に座りながら、オルゴール調の音楽が流れる。喫煙者はフロアが違うため、煙草の臭いにコーヒーが邪魔される事なく味わえる。
チビチビと。
「くねゆすりって言ってました。くねゆすりが巨大な岩を神社に投げ入れたのだとか、山の神様の祟りだとか」
ふむと、コーヒーカップを置く。
「ですが、月藻典子さん。くねゆすりだとしたら、安全だと思いますよ。危害を加える様な妖怪では無いですし。それよりも、その祟りが怪しい気がしますね」
マスターと三人で話をしている。
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