三吉鬼

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 隠すような話ではない時、マスターはこうやって、客の会話に入って来る。空気読みの天才なのだろうと思っている。 「ところで、くねゆすりって何なんだい」 「そうですね。くねって言うのはアレです。生け垣」  都内ではあまりないが、この辺りの町にも時々ある。  宙禅堂の辺りの公園も小さな生け垣が目隠しになっていた筈だ。  最近行っていないが、確か。 「生け垣って、妖怪じゃないじゃん」 「そうですね。くねが生け垣です。くねゆすりは、つまり生け垣を揺するってことですよ」  そう、怖い妖怪では無し。 「生け垣が風とかで揺れるってことか」 「はい。諸説ありすが、生け垣の中には虫や鳥、猫もですか、いろいろと隠れているのですよ。隠れやすいですからね。勿論風もそうです。そう言ったモノがゆさゆさと揺らす。昔の人はソレを怪異にしたのでしょう」  今より明りの無い真夜中。  突然生け垣が大きく揺れるのは幽霊か妖怪だろうと。 「ええ、そうですかね。だって、町の人は祟りだって言ってたけどなぁ」 「そこが気になるんですよね。祟りだっていうからには、祟られる理由が有るってことですよね。何かくねゆすりに悪い事でもしたのでしょうか」     
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