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牛乳箱を見つけた翌日、
「飲むかい」
と一本の牛乳瓶を差し出された。
黙って受け取ると、祖母は安堵の表情を浮かべて、左手に持った牛乳瓶に手をかけた。
混じり気のない、純粋な白が祖母の身体に取り込まれていく。
最後の一滴が消えていくのを見届けてから、渡された牛乳瓶の蓋を開ける。
口に含むと、甘く柔らかい味がした。
半分ほど一気に飲み干して、口を離す。
「どうだい。美味しいでしょ。週に二回、二本ずつ配達してもらってるんだ」
テーブル越しに、祖母の低くなった視線を合わせると、頑健な歯を覗かせて微笑んでいる顔があった。
それから、祖母と一本ずつ、週に二回牛乳を飲んだ。
一色の自我に染まった、濃い白を飲むたびに、私の中に感情が生まれた。
少なかった口数も、少しずつ増えた。
キンキンに冷やされた牛乳瓶を祖母と煽る瞬間は、いつしか私にとってかけがえのないものになっていた。
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