牛乳

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祖母の家から帰ってきた後、どうにかこうにか精神状態を平らに保って、大学受験をくぐり抜け、久々に祖母の顔が見たいと思い始めた矢先、祖母が亡くなった。 脳梗塞で、病院から電話がかかってきた時には既に帰らぬ人だった。 家に帰る日の、夏休み最後の日曜日に、 「飲むかい」 と差し出された牛乳瓶。 あれが祖母と飲み交わした最後の時。 祖母の亡骸を傍らに感じるたびに、頭の片隅であの白い牛乳瓶が浮かび上がる。 周りからは、ぼんやりいつも考えごとをしてる子、と見られていたようだ。 死人を目の前にしたら、誰だって生前を思い出しながら悼むものではないのか。 遠い親戚達は、私を品定めしているかのように不躾な視線を投げる。 祖母の家の隣人は、本当に泣いていた。 人の性格の違いに、涙が引っ込んだ。 悲しみなのか怒りなのか、失望感とも諦観ともつかない感情が、胸の内で渦巻いては消滅した。
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