2

2/8
前へ
/356ページ
次へ
 時おりテーブルの間を歩き、ゴミが落ちてないか、テーブルが汚れてないかを確認する。 各テーブルに置かれた小さな花瓶には毎日違う花が飾られ、花の種類によっては花びらが落ちるため、それも拾いながら視線を走らせる。  朝の客はサラリーマンが多く、そう長居することはない。  十時頃になると外からの客がぼちぼち入り始めるが、常連が多かった。 いったい何者なのかと思う人間がほとんどである。中にはわかりやすい人間もいるが、そういう客は週に二、三度来る程度で、毎日顔を出す客たちはその職業さえ想像がつかない。  十一時を過ぎ、ランチタイムのための遅番のキャストが増えてくる。早番はそれと交代で早い昼休憩に入る。 「辻、相澤と加納も、二番入って」  主任の田坂が、いつもの黒服で声をかけてきた。  二番とは休憩のことだ。五番だとトイレで、七番は両替、という風に客の前での暗号になっている。 「わかりました。お先します」  直人は加納と並んでフロアを出た。相澤はその少し後方をついてくる。 「辻、社食?」  隣を歩く加納に聞かれ、直人は頷いた。 「もちろんです」  外に出れば近くに様々な飲食店があるが、懐のことを思えばなかなか外にまで行くことはない。 「相澤は?」  加納が後ろを振り返る。 「……社食にします」     
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1364人が本棚に入れています
本棚に追加