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時おりテーブルの間を歩き、ゴミが落ちてないか、テーブルが汚れてないかを確認する。 各テーブルに置かれた小さな花瓶には毎日違う花が飾られ、花の種類によっては花びらが落ちるため、それも拾いながら視線を走らせる。
朝の客はサラリーマンが多く、そう長居することはない。
十時頃になると外からの客がぼちぼち入り始めるが、常連が多かった。 いったい何者なのかと思う人間がほとんどである。中にはわかりやすい人間もいるが、そういう客は週に二、三度来る程度で、毎日顔を出す客たちはその職業さえ想像がつかない。
十一時を過ぎ、ランチタイムのための遅番のキャストが増えてくる。早番はそれと交代で早い昼休憩に入る。
「辻、相澤と加納も、二番入って」
主任の田坂が、いつもの黒服で声をかけてきた。
二番とは休憩のことだ。五番だとトイレで、七番は両替、という風に客の前での暗号になっている。
「わかりました。お先します」
直人は加納と並んでフロアを出た。相澤はその少し後方をついてくる。
「辻、社食?」
隣を歩く加納に聞かれ、直人は頷いた。
「もちろんです」
外に出れば近くに様々な飲食店があるが、懐のことを思えばなかなか外にまで行くことはない。
「相澤は?」
加納が後ろを振り返る。
「……社食にします」
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