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何が不満なのか、相澤はいつも眉間にシワを寄せ、きつい目線で人を見る。もちろん客の前ではそうでもないが、いつも余裕がなさそうに見えるのだ。
三人揃って食堂へ入ると、二種類しかないメニューからどちらかを選ぶ。
三人とも今日は日替わりだった。もう片方のカレーが、味がいまいちなのを知ってるからだ。
しかし一食二百円という安さは下っ端の従業員にとっては魅力的なので、日替わりに嫌いな物があればそちらを選ぶこともある。
「辻、お茶」
「はい。相澤さんも同じのでいいですか?」
「自分でやります」
直人が加納の向かい側から、少し離れた席についた相澤へ声をかけると、そっけなく断られる。 直人は加納と視線を合わせるが、大らかな先輩はいいんじゃない、とでもいうように肩を竦めて見せた。
直人は二つの湯飲みを持って席につく。 そして互いを見もせずに食事を始めた。
休憩時間は短いのだ。
「おまえ明後日、早番?」
加納が目も上げずに直人に聞く。
「そうですね」
直人はちらりと加納を見て、ふたたび貧相な食事に目を移した。
「俺も。食券百二十枚出てるってよ」
思わず直人の箸が止まる。
レストランには四人掛けのテーブルが十五しかない。朝食をやっている和食の店もあるが、そちらはさらに狭かった。その時の混乱が目に見えるようである。
「それは……貧乏クジ引きましたね、お互い」
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