プロローグ

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 わかりきったことを呟き、温めた惣菜をこたつの上に並べ、ポットのお湯とティーパックでお茶を入れた。風呂に湯を溜めようか直人は迷う。 浴槽を洗うという行為があるためだ。 とりあえず部屋の中と体があったまるまでお預けだなと決めると、そのままこたつの中へ足を差し入れる。  テレビをつけて食事をし、あらかた片付けた後には、直人はまったりとこたつの住人になってしまっていた。  ここ数年は、こんな年末年始の過ごし方である。バイト先で年を越すことさえあった。 実家に帰るのは三が日を過ぎ、ぼちぼち通常のシフトに戻ってからだ。 それにしたって実家に泊まるのは一泊か、最悪日帰りだ。 それにあまりいい顔をしない父親だが、バイトがあるので仕方ない。  そんな訳で友だちと何かを約束することもなく、元旦はいつも一人でもちを食べていた。 「ありえないでしょ、それ」  一人の時間はとかく独り言が増える。今もテレビ相手に話している。 そんな自分に時たま気づき落ち込むこともあるが、仕方ないよなと諦めていた。 「おもしろいなぁ、この人」  つまみにと買ってきたポッキーをかりかりと食べながら、テレビに集中する。 だって他にやることがない。  電話やメールをひとつふたつすれば、カウントダウンパーティーをやってる友だちもいるだろう。  だが、バイトで疲れたところにさらに人に気を使い、疲労を蓄積させる気にはならず、直人はだらだらと一人で過ごしているのだった。     
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