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 無垢だからこそ描ける、思いきった絵。 目も鼻も口も一緒になっていてその違いは色だけだ。  思わず口がほころぶ。  他愛ない絵なのに、どこか心をあったかくさせてくれるそれに、直人は知らず知らず見入っていた。  どのくらいそうしていたのか、直人が気づいたときにはもう八時を回っていた。 帰ってきたのが六時半くらいだったから、一時間くらいそうしていたことになる。  直人はこたつから立ち上がった。 腹も減ったが、何より絵のお礼をせねばと考えたのだ。  先日買ったばかりのレターセットを収納ボックスから取り出すと、すぐにテーブルの上に広げる。 直人は思いがけず貰えたプレゼントが嬉しかったことを書きしたため、辻直人と書き添えた。  それにしてもここ数年で一番嬉しい日かもしれない、と直人は一人こたつに座り、微笑んだのだった。
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