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 食欲は後退した。だが食べなければ不要な心配をかけるだけだとわかるから、直人は味を感じないままに機械的に食事を口へ入れてゆく。  スキンシップが増えたのも、面倒をみてくれるのも、直嗣がただ親という情に溢れてるから。  何故恋人にするように、などと一瞬でも勘違いしてしまったのか。直樹を可愛がるように、直人をも構ってくれているだけだというのにーー。  それが嫌だとは言えない。  事実頭を撫でられ優しくされることを、直人は心の底では喜んでいたのだから。  直人はただ、その意味を履き違えただけ。  浅ましい。  直人は美味しいとも不味いとも感じない物を口の中で咀嚼し、無理矢理それを飲み込んだ。  ここで落ち込む方がおかしい。自分を親身に思っていてくれるのがわかるから。  直人は何度もそう頭の中で繰り返し、自分に言い聞かせる。これ以上を求める方がおかしい。それ以上を求めてはいけない。そう思うのにーー直人の心臓はとてつもなく締めつけられ、息が止まりそうになっていた。 「……」  ふっと息をついても、上手く空気が肺に入ってはいかない。     
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