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寒さの厳しい二月に入り、防寒にも余念のない直人はほっかいろをダウンジャケットのポケットに入れ、仕事帰りの道を歩いていた。
時刻は夜の八時を過ぎている。
今日はちょっとした団体の予約があり、少しだけ残業をしたためいつもよりも遅い時間になったのだ。
直嗣とその息子の直樹とやり取りはまだ続いていた。
結局お礼はいらないからと直人が申し出ていて、それじゃ気がすまないという直嗣のかたくなさから、二人の意見は平行線のままだった。 だが、直樹の絵を楽しみにしてることが伝わったのか、毎回いろんな絵を同封してくれる直嗣に直人は感謝していた。
直人からも何か直樹にあげたいと思いはするが、四歳児が何を欲しがるかなど見当もつかず、直嗣にも言えないまま文通を続けている。
「いらっしゃいませー」
家の近くのコンビニで夕飯を調達するために中へ入る。
直人は気の抜けた店員の声を聞きながら、まっすぐ弁当のコーナーへ向かった。
すると近くで、子どものぐずる声が聞こえてくる。
「これじゃ、ないもん」
「仕方ないだろう? ここにはないんだ」
「やだあ。あれがいいっ」
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