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「そこ、見たいんですけどー」  四十代後半らしき女が、うろんげな表情で直人たちと陳列棚を見ていた。 「あっ、すみませんっ」  直人は自分が他の客にとってかなり邪魔な場所にいることを思い出す。 見回すと店内は混み合ってきていて、買い物もしない人間がいるには少々居たたまれない場所になっていた。 「とにかく、出ましょうか」  ようやく混乱の波から戻ってきたらしい男ーー直嗣が、直樹の手を取り直人を促した。  とりあえず店の外へ出て、通行人の邪魔にならない場所まで来ると、くるりと直嗣がふり返る。 「改めて。初めまして、辻村直嗣と直樹です」  軽く直嗣が頭を下げ、直樹の頭を撫でる。 「はい、あの、辻、直人です。初めまして」  直人もそれにならい、自己紹介をした。  だがしかし、寒い。  とにかく立ち話をするにしても寒いのだ。 それは直嗣もわかっていたのだろう。 「辻さんは今から夕食をとられる所だとお見受けしたのですが」  直嗣は寒さを感じさせない真面目な表情で直人をまっすぐ見つめている。 傍らにいる直樹は好奇心いっぱいの顔だ。 「ええ……まあ。ここで買おうとしてたところです」     
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