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 案内された五階の部屋は、玄関からして直人の部屋とは大違いだった。 天井は高いし、壁に埋め込まれたシューズボックスはどれだけの量を収納できるのか見当もつかず、直人を嘆息させる。  広い廊下の先にあったのはダイニングキッチンで、二十畳はあろうかというリビングと繋がっていた。 「どうぞ、座っててください」  直嗣にそう言われたが、本人はキッチンへ入っていったので、何か手伝った方がいいのではと直人が迷っていると、可愛らしい舌足らずな声に引き止められる。 「おにいちゃん、こっち」  直樹がガタガタとダイニングチェアを引くのを見て、直人は断るわけにもいかず「ありがとう」と言ってそこへ素直に腰を下ろした。  直樹はちょこんとその隣の自分専用の椅子に座り、直人の顔を見てにこりと笑っている。 「おにいちゃんはちかくにいるんだよね?」 「そうだよ。だからさっきのお店で会えたんだ」 「じゃあ、いつでもあえる?」  素直な直樹の言葉に、直人は困ったように苦笑した。 「こら、直樹。直人くんを困らせたらダメだろう? お仕事してるんだから、そう簡単には会えないよ」     
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