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 キッチンから出てきた直嗣が、両手に料理の皿を持って歩いてくる。 上着を脱ぎ、シャツをまくりあげた直嗣は、黒のエプロンをつけていて、それが意外にもとても様になっていた。 「えー、なおとおにいちゃんもおしごといしがしいの?」 「忙しいときと、そうじゃない時があるかな?」  直樹がきょとんとした目で直人を見る。そして、にこりとあどけなく笑った。 「じゃあパパといっしょ。きょうパパいそがしくてりょうりできなかったんだ」  その言葉に直人は首を捻りテーブルの上をちらりと見る。では、この料理はーー?  そう考えたのが分かったのか、直嗣がすぐに答えてくれた。 「大見得きったんですが、今日は遅くなったので通いの家政婦さんに作りおきしてもらってたんです。すみません」  申し訳なさそうに直嗣が頭を下げるので、 直人は慌てて手と頭をふる。 「そんな、十分です。俺こそ突然お邪魔しちゃって申し訳ないです。あの、でも、辻村さんの分とっちゃわないですか? 俺」 「それは大丈夫です。明日は休みなので多めに作ってもらっていたので」  整った顔で小首を傾げられ、そのイケメンの圧に直人は何故か恥ずかしくなり、思わずもぞりと尻を動かした。  直嗣はそのあとも忙しなく動き、料理をテーブルに並べた。その間直人は、直樹の話し相手をかってでる。     
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