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「直樹くん。歯磨き終わった?」
直人が声をかけると、直樹は眠い目をこすり頷く。
「うん。もうおねんねだから、ばいばいするの」
「そっか。じゃあ、またね?」
「うん、おやすみなさあい」
ちゃんと挨拶の出来た直樹の頭を、直人は優しく撫でた。
「おやすみ」
嬉しそうににこっと笑った直樹が、また来たときのように小さな脚でとてとてと父親の方へ歩いていく。
その背中を見送ると、直人はよし、と腕まくりをしてキッチンへ入った。料理はできないが、洗い物は職場でもやるから慣れている。直人の1Kの部屋にある狭いキッチンとは比べ物にならないほど広く、綺麗なシンクで三人分の食器を手早く洗うと、今度は布巾でそれらを拭き始めた。
あらかた片付いたところで、直樹を寝かしつけてきたらしい直嗣が物音を立てないように静かに歩いてくる。そして直人がキッチンに立っているのをみて目を丸くした。
「片付けてくださったんですか。よかったのに」
「御馳走になったんだから、このくらいやりますよ」
布巾を掛けながら直人が言うと、直嗣が「ありがとうございます」と頭を下げる。
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