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ちょっとお邪魔して帰るつもりだった直人は、驚く。
「そんな、僕のためにそこまでしなくても……」
「ーーわたしの手料理は食べられませんか?」
そう言って直嗣が淋しそうな表情を作るから、直人は何も言えなくなってしまった。
「せっかく手紙で知り合えて、今日偶然にも会えたんです。この先も仲良くしてくださると嬉しいんですが……」
そこまで言ってくれる直嗣に、直人はもう頷くしかなかった。 もとよりこの関係が続くといいなと、頭の隅で考えていたのは直人も同じ。
それなら、と直人はおずおずと頷いた。
「それは……あの、嬉しいです。……えと、じゃあ明後日、またご相伴にあずかります」
直人が丁寧に頭を下げると、直嗣も同じように頭を下げる。
「ということで」
頭を上げた直嗣が、仕切り直しのように直人を見つめた。
「明後日までの宿題としましょう。敬語をお互いにやめること。どうです?」
「敬語を、ですか?」
直人は難しい顔をした。
「わたしのことは直嗣でかまいません。直樹もいますからね。」
「でも、辻村さんは年上ですし……」
「仲良くなるならまず言葉から、ですよ」
にっこりと微笑む直嗣に気圧され、直人は思わず頷いてしまう。
「努力します」
「よかった」
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