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直人はすぐにカウンターの中に入ると、「加納さん、十二番アフターコーヒー入ります」と声をかける。
「おう。了解」
加納はすぐに伝票をチェックする。
直人は温められたカップとソーサーを取りだし、トレイに並べると、ミルクを温め砂糖の準備をして最後にコーヒーを注いだ。
「それ、十二番の?」
横合いから相澤に声をかけられ、 直人は「そうです」と頷いた。
「オーダー取ったの私だから、私が持っていくわ」
相澤は相変わらず眉間にシワを寄せ、不機嫌そうな顔をしている。 直人は俊巡したあと、「お願いします」とトレイごと宮澤に渡した。
受け取った相澤は直人にそれ以上何も言わず、そのままフロアに出ていく。
「辻」
その姿を見送っていると、後ろにいた加納から呼ばれた。
「なんでもかんでも、相澤に遠慮する必要ないんだからな」
苦笑している加納の言いたいことはわかるが、直人はできるだけ波風を立たせたくなかった。 相澤はオーダーを取ったかどうかに関わらず、よく横から仕事をかっさらっていく。 直人が主任や先輩から頼まれた仕事でもそうなのだ。だからあまりキャスト仲間にいい顔はされてはいない。主任などは仕方ないな、という顔をするに留めているようだが。
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