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 面倒ごとを嫌う直人は、それについてどうこう言ったことはない。ただ、何も感じていない わけではなかった。  それをわかっているからこその加納の言葉、なのだろう。 「わかってます。とりあえず手は空いたので、何かありますか?」  直人は微笑んで加納の言葉を飲み込み、用はないかと問うた。 「とりあえずないな。……辻は我慢強いなあ」  加納は呆れた顔で伝票のチェックを始める。 それを聞いた直人は苦笑しながら、カウンターの裏側にある小さなシンクの中にたまったグラスやデザートスプーンを洗い始めた。 「そういうわけじゃないです。人間関係複雑にするのが嫌なだけなんで」  単に面倒なだけだと告げると、後ろに立つ加納が含み笑いをする。 「そういえば辻は人当たりはいいけど、深入りしないもんな」  今はカウンターに客がいないため、会話が客に聞かれることはない。スタッフも今は皆フロアに出ていた。 「あー、そうですかね? あんまり深く考えたことないんですけど……」 「無意識かあ。あんまり良い事じゃないなあ」  加納がディッショップの仕事を取り敢えず終え、直人の傍らに立った。 「……ダメですか?」     
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