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 隣で直人が洗ったデザートスプーンを纏めて、広げた真っ白なクロスの上に並べる加納をちらりと見る。加納は「うーん」と唸り、並べたスプーンを一本一本別のクロスで拭き始めた。 「ダメって言うか、辻がキツいだろって話」 「僕が、ですか」  手早く慣れた手つきでスプーンの水気を取り、それを綺麗に重ねて置いていきながら加納は直人だけに聞こえる声で続けた。 「深入りしないなら面倒は起こらないだろうが、いざとなった時相談できる相手もいないってことだろう?」  洗い物をすべて終え、水道の水を止めた直人が蛇口を握ったまま考え込む。  相談できる相手と言われ、咄嗟に思いつく人間が一人もいないということに気付いたからだ。  押し黙った直人に、加納が小さく笑い、仕上げにもう一度乾いたクロスですべて吹き上げ、カトラリーボックスへ仕舞い込む。 「まあ、いきなりは無理でも、自分のこと話せる相手、見つけろよ。あ、もちろん俺でもかまわんぞ? おまえのことは気に入ってるしな?」  わざと茶化すように締めくくった加納に、直人は困ったように笑って頷いた。
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