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 オーダーストップが近くなり、忙しなく食後のデザートが作られていく。直人もホテル内で作られたケーキを慎重にプレートに移し、空いたスペースをスプーンを使って絵を描くようにソースで彩る。仕上げにミントの葉をホイップの上に置き、熱いコーヒーをカップへ用意した。トレイとプレート一枚を持って優雅にフロアを歩き、オーダーした客のテーブルへ運ぶ。  そこまでは、良かった。  だが、空になったトレイを脇に持ち、軽く客に頭を下げ後ろを振り返った時だった。 「っ!」  ガシャン、とけたたましく高い音がフロアに響く。  頭の中が真っ白になった直人よりも早く、近くにいた加納が「大変失礼致しました」と、よく通る声で客たちに謝罪し、早足に直人の元へ駆けつけた。 「辻」  名を呼ばれすぐに直人は反応する。 「申し訳ございませんっ」  周囲の客が何事かと注目する中、直人は深々と頭を下げるとすぐに屈み込み、落ちて割れたプレートを、持っていたトレイに拾い集めていく。加納は「ほうきを持ってくる」とすぐに動いてくれた。そして、もう一人。直人と同じように皿のかけらを拾っているスタッフがいた。  相澤だ。     
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