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 加納がそんな風に言うのなら、もしかしたらぶつかった所を彼は見ていたのかもしれない、と直人は思った。しかし、それは早合点だったようで、続けた加納の言葉に直人は驚いた。 「って、お客さんが言ってたぞ。残念ながら俺は見てなかったんだが」 「お客様が……」  直人が呟くと、加納が強く頷く。 「ああ。おまえがデザート出したテーブルのお客さん、掃除してた俺にわざわざ声掛けてくれてさ。どうやら相澤がいきなりあそこで立ち止まってよそ見してたらしい。だから、あんまりお前のこと責めないであげて、だってさ。おまえ、客ウケ良いよな」  笑って報告してくれる加納に、直人はその有り難さに泣きそうになってしまった。  失敗は幾度となくしてきたが、こんな風に客から庇われるというのは初めての経験だったのだ。 「ちゃんと見てくれる人がいて、良かったなあ」  加納が涙目になった直人に気づいたのだろう。今度はぽんぽんと子供にするように頭を撫でてくる。  それにはさすがの直人も、恥ずかしさでじりっと避けるように半歩下がった。 「……やめてください。でも、ありがとうございます。それと、やっぱり不注意だったのは本当なので、申し訳ありませんでした」  例え相澤がぼうっとしていたのが原因だとしても、ちゃんと確認していれば回避できた失敗だった。直人は素直にそれを認める。     
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