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呼び鈴をならすと、インターフォンからすぐに老齢と思われる落ち着いた女性の声で応答があった。 『辻様ですね。すぐに開けます』 それほど待たずにガチャと鍵の開く音がする。 するとすぐに直樹の声が聞こえてきた。 「おにいちゃん、いらっしゃいっ」 ドアを開けたのはエプロンをつけた女性だったが、その足元に縋るように笑顔の直樹がいた。 「こんにちは。直樹くん」 その可愛らしさに、直人は自然と笑顔になって小さな家人に挨拶をする。 「初めまして。家政婦の遠野と申します。どうぞ、おあがり下さい」 遠野と名乗った女性は、ほっそりとしてはいるが、柔らかな雰囲気の五十代くらいの家政婦だった。 「初めまして。辻直人です。よろしくお願いします」 少し緊張した面持ちで丁寧に頭を下げた直人に、遠野が驚いたような顔をしたが、すぐに直人を中へ促すように身を引く。 「お邪魔します」 もう一度頭を下げて直人が玄関へ入ると、直樹が待ちきれないように直人の手を引っ張った。 「おにいちゃん、はやく! ぼくのつくったクッキーみて!!」 「あっ、な、直樹くん、待って」     
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