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子供というのは存外力が強く、靴を履いたまま上がりそうになり、直人は慌てて呼び止める。するとその手をさり気なく遠野が取ると、しゃがんで直樹と視線を合わせた。
「直樹さん、お客様にはまずどうしてもらうんでした?」
優しく問いかける遠野に、直樹がきょとんとしたあと、元気いっぱいに答える。
「すわってもらって、おちゃをだす!!」
「そうですね。じゃあ、お茶の準備をまずしましょうか。手伝ってもらえます?」
「うんっ!」
遠野が直樹と手を繋いで奥へ向かいながら、顔だけを直人の方へ向けた。
「ゆっくりいらしてください。手を洗われるなら、この右手のドアが洗面所になっておりますので」
微笑んだ遠野に、直人はほっと笑顔を返し頷いて見せた。
直人はうっかりして、すぐには脱げないブーツを履いて来てしまっていたのだ。遠野はそれを見越してくれたのだろう。直人は次に来る事があれば、簡単に脱げる靴にしようと、そう心に決めたのだった。
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