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その後の、実直で真面目な勤務態度や、たまたま任された人事に功績が生まれたことから、今は何とか監察官として仕事をしている。
「監察の結果は、また追ってお知らせします。今日はこれで終了です」
倉沢巡査は、頭を下げて部屋を出て行った。
吉沢は、しばらくして出血多量で病院に搬送されて、すぐに亡くなった殉職警官が持っていた携帯電話を見た。
待ち受け画面には、優しい笑顔の女性と、小さな子供の笑顔があった。
知っている顔だった。
昔、警察学校を出てすぐの頃、同期の”あいつ”の家に行ったことがあったから。
現場の確認と、検証も兼ねて、吉沢はその住宅地を訪れた。
閑静な住宅地で、平穏そのものの気配に包まれている。
しばらく歩くと、小さな門構えのついた一戸建ての前に到着した。
血まみれになっていて、凄惨だったその場所は、今はきれいに洗浄、清掃され、この閑静な住宅地にふさわしい佇まいに戻っていた。
だが、前に現場を見た時とは違っているところもあった。
門の脇には小さな花檀が作られていて、そこには様々な花々が咲いていた。
ひっそりと咲いているその花々がこっちを見てるような気がした。
ふと、玄関から、高校生ぐらいの女の子が出てきた。
門を開けて外に出る。
女の子は、その花壇に咲いている花に、水をやりに来たのだった。
少女が不意にこちらを振り返った。
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