月光

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彼も私もきっと寂しかったのだと思う。あの時期に味わう取り残されたかのような感覚は、孤独感ともいえるし自立でもあるのだと思う。それでもその孤独から孤高に一人で立ち上がれる人間は限られた一部の人だと思うし、少なくとも私や彼は誰かが隣にいないと生きていけないのだ。彼の絵は初めこそ見ている人は数えるほどしかいなかったのだが。少しづつフォロワーも増えてきて彼はとてもうれしそうであった。一方私は、彼の絵はどうでもよかったのですが。段々彼を支持する人が増えるごとに嫉妬が私の内側から飛び出してくるのを日に日に感じてしました。私にとって彼の絵は私と彼が出会うためのきっかけに過ぎなかった。けれど彼は自分の絵が本当に価値があるものだと信じている。彼は自分の抱えている空虚な気持ちをまぎわらすために絵を描いているのだと思っていたのだが。実際は虚無的な思想などなく彼の絵を見ている人間と同じだったのだ。 私はそれでも彼とまだ話をしていたかったのだが。彼は私からどんどん離れていった。前は毎日していたメッセージのやり取りもだんだん少なくなり。最近私が送ったものに全く応答してくれなくなった。それは当然の事だと思う。私の中身のないからっぽな言葉よりも、彼は彼の絵を愛してるペラペラな人間のほうがいいに決まっている。私は潔く諦めようと思いたいのだがそれは私が空虚である限り一生解決できない問題なのだ。     
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