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私も本心はもう諦めたい。だけどここで引いては後で必ず後悔する。私が悪いことをしてもいないのに罪悪感を感じるのは嫌なのだ。
今の私は正義の皮をかぶりながら実のところは、自分のために行動している偽善者に違いなかった。それでも私は止められなかった。むしろ止まらないのが正解だとさえ思う。私は再び彼から財布を奪おうとしたが、またもや振り払われた。薄暗い路地裏での攻防はしばらく続くかとおもわれたので、私は気を張っていこうと思っていたら。私の体に予想外のことがおきた。私が急に泣き出してしまったのだ。彼は私を見て戸惑い始めたが、私の方こそなぜ自分が泣いているのかわからなかった。彼の事が怖かったのだろうか。偽善者な自分を恥じたのだろうか。彼の家があまりに水ぼらしかったからだろうか。
「どうしたんだよ。いきなり泣くなよ」
彼は心配している様だが、あきれてるようにも見えた。私はなにか言い返そうとしたのだが。嗚咽でうまく言えなかった。彼もどうすればいいのかわからなそうな顔をしていて。女の武器を使っているようで、申し訳なくなった。
「わかったからもう泣くなよこの財布なら渡すからさ」
彼は不満そうに言った。
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