月光

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また夕食を作っているのか。つまらないな。一人娘の私は社会がこの現実社会の一つしかない。なので小さなころは好き勝手に生きても何も言われなかった。私の両親は厳しくない。両親は私が少女から女性になってどこかに嫁いで欲しいのだろう。けれども私は結婚して家庭を持つ。つまり女から母親になるのが嫌なのだ。だけれど私は両親を尊敬しいるし、家族は素晴らしいものだと思う。子供だって嫌いではないし楽しいこともあれば悲しこともある。そんな風景は好きなのだ。他人のならば。私は私の視界には入れたいだけで自分の手がそこに何か影響を与えてしまうことに恐怖?を感じてしまうのだ。 私は夕食を食べ終えると自室で今日のことを振り返った。なぜ彼に会いたいのかもう一度よく考えてみた。彼の事を初めて見たとき私は特になんとも思はなかった。後ろ姿だったのもあるが。背丈も服装も髪型も普通だったのでとくに気に留めもしなかった。そして彼が財布を盗んだ時、私はなにを感じたのだろう。その瞬間の私は正義感だとか倫理、道徳に突き動かされたのだと思っていた。結局のところは偽善となってしまうのだが。今になってよくよく考えてみると違ったような気もする。私は彼が財布をポケットにしまったときに一種の興奮状態に陥ったのではないのかと思う。二十年近く生きてきて私は犯罪という物を見たことがなかったし体験もしたことなかった。私は中学、高校と真面目な場所で規則のある友人、両親や周りの大人たちに囲まれていた。私のいた世界は普通だ。当たり障りのない。普通の世界だ。しかしながら、私は別に犯罪が美しいだとも思っちゃいない し、普通の道徳をもった人間だと思う。実際に財布泥棒を捕まえようとした     
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