性悪

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性悪

  こういうん苦手なんやけど──。  何を血迷ったかとあるセミナーへの参加を決めた(自業自得)私は、気乗りしないながらも某オフィスビルの会議室のような場所に入る。開演ギリギリに入室したので最後尾の席しか空いておらず(寧ろ好都合)、そこに腰を収めた。  知らない人だらけの空間。この辺りに知人なんて居ないだろうと思いながら視線を動かすと、かつて仲違いした女性(仮にAとしておこう)が前方の席で数名の女性と談笑していた。初めから連れ立って来ているのか待ち時間中に親しくなったのかは不明だが、Aは比較的カーストグループの性分だと思われるので人当たりは良い方なのだろう、多分。  私はすぐさま視線を外し、机の上に置いてある冊子を広げる。この講義は約二時間予定、講師の談義みっちりフルコースなのかと思いきや、ディスカッションなるものまであるらしい。何が悲しくて知らない人間とあーでもないこーでもないと話し合わにゃならんのだ……いっそ帰ってしまおうかと後悔の念すら湧き上がってくるが、支払った金が勿体無いと流石に退席まではしない。
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