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「雪ん子ゆきこ」
お隣の晃ちゃんは、あたしをこう呼んだ。
あたしは生まれつき肌が白くって、おまけに「ゆきこ」って名前なもんだから、からかいの対象にされることが多かった。
とりわけ、 いじめっ子気質の晃ちゃんにとって、身近なあたしは格好の的だった。あたしが嫌がるのを面白がっていたのか、どんなに「やめて」と頼んでも、その呼び方を変えてはくれなかった。
そんな晃ちゃんとは何の因果か、生まれた時からずっと一緒。あたしの親が家を建てた時に、偶然にも、晃ちゃんの親もその隣に家を建てたらしい。
あたしのママと晃ちゃんのママの妊娠期間もなんとなく一緒。両家が仲良くなるのは、いわば必然だった。
生まれたのは晃ちゃんが先で、たった三ヶ月だけど、物心ついた時から兄貴ヅラされてきた。
あたしと晃ちゃんは、周りからは仲のいい兄妹のように見えていたらしい。でも実際はボスと子分の関係で、あたしは晃ちゃんの命令に逆らえなかった。
「おい、雪ん子ゆきこ」
そうやって、晃ちゃんはあたしを呼んで、決まって何か命令をするのだ。
あの日も、そんな一言から始まった。
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