第4章 気にしないなんてできない

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一通り知識を蓄えたあたりで時計を見てみると、授業まであと五分を切っていた。まだまだ気になることがあるけれど、ここは高校生として授業を受けなければならない。私は本を閉じて、カウンターで借りる手続きをして図書館を出た。  地下の洞穴を住処にしている、とか書いてあったっけ。でも、昨日遭ったのは公園だし、そもそもこの辺りは都心部とまでは言わなくても、田舎ではないから山もないし、洞窟なんてあるわけがない。  教室への廊下で、またそんなことを考えていた。 「あなたが詳しく知る必要はないわ」  綺麗な声がした。そして同時に横から冷たい外気が流れ込んできたのを感じた。そっちを見てみると、いつも閉まっている窓が開いていた。しかしそれよりも、私は風になびく緑色の髪に目がいった。 「セリーヌ・クーヴレールさん?」 「ええ。昨日ぶりね、お嬢さん」  彼女は靴を履いたまま廊下に入ってきた。そして、私が脇に抱えていた本を取り上げた。 「ちょっと!」 「ドラゴンを探るのは私の仕事よ。あなたには関係ない」 「いいじゃないですか。ちょっと気になっただけなんですから」 「まあ、その程度ならいいけど」  彼女はドラゴンにも似た鋭い目をした。抑圧的な目だ。 「深入りはしないで」 「え?」  今にも刺されそうな目。 「あなたと私たちは違う。違う世界の住民なの。こっちの世界に足を踏み入れないで」  ――いや、刺そうなんていう目ではない。突き放す目だ。 「……はい」     
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