第4章 気にしないなんてできない

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 私が答えると、彼女は(やさ)し気な顔に戻った。 「いい子ね。じゃあ、これは返してあげるわ」  本を押し付けるようにこっちに渡すと、さようなら、とウィンクして去って行った。  深入りはしない方がいい――分かっている。あれはヤバいやつだ。深く突っ込まない方が絶対にいい。いっそのこと、記憶が消えれば楽なのにな。  そんな都合のいいことは起こらないと、私は分かりきっていた。
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