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私はそんな世界に生まれてしまった。赤ちゃんは親を選ぶというけれど、私は生涯を始める前に生涯最悪の決断をしてしまったらしい。だが、両親を恨んでいるわけではない。むしろ感謝している。私を産み落としてくれてありがとう。名前をつけてくれてありがとう。育ててくれてありがとう。こんな世界じゃなければ、私は幸せになって親孝行したい。
私はプリンセスになりたかった。必ず幸せになれるプリンセスに。美しい世界のプリンセスに。いつまでも幸せに暮らせるプリンセスに。
素敵な王子様と出会って――幸せなプリンセスになりたかった。
でも、生まれる世界を間違えた私はそうはなれない。この世界には王子様なんていないし、いくら頭がよくても、真面目でも、正しくても、プリンセスにはなれない。それでも、願望を諦められない夢見る私は王子様が現実に現れてほしいと願った。私を幸せにして、と願った。
――願いは叶わなかった。
現実にはやっぱり幸せにしてくれる王子様は現れなかった。その人は言った。
「幸せにしてくれる王子様なんていないわよ。そんな人がいてもそれは王子様じゃないわ。ただ言うことを聞いてくれるお人好し」
夢もクソもない言葉だった。王子様を夢見る私には胸に刺さった。しかし、その人は遠慮せずに続けるのであった。
「幸せにしてくれる人を探す暇があるなら、いい女になりなさい。そしたらいつか、一緒に幸せになってくれる人が現れるから」
その人は澄んだ緑色の目で真っ直ぐと私を見てくれた。
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