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私を呼ぶ声がした。友達のいない私にも名前を呼んでくれる人はいて(そのときは大抵なんらかの用があるときで、雑談を振られることは絶対にない)、そのときは先生でさえきちんと名前で呼んでくれるのだが、私の周りでただ一人、名前を呼ばない人物がいる。呼びかけに応えて振り返ってみると、やっぱりその人だった。
南雲一斗。同じクラスの出席番号二十六番。彼のことをよく知っているわけではないが、特別に変わった点のない、普通の男子生徒だ。強いて言うなら、友達の多い方ではない、ということだろうか。知っている限り、彼が友達と話しているところを見たことがない。ずっと彼を見ているわけではないので、たまたまそうであるだけだろう。
さて、そんな彼がどうして私を呼び止めたのか。それは聞いてみないと分からない。
「どうしたの?」
「先生がそろそろ大掃除の日程と担当を決めてほしいって」
「あ、そうだった」
やっぱり業務連絡だった。
「明後日の放課後までに教えてくれって言ってた」
「うん。ありがとう」
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