第15章 私たちのその後

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 目の辺りをハンカチで拭う彼はそんな反応をした。ただの呼び名だけど、妙に気になっていた。今日だって名前で呼ばれなかった。昨日の告白だって、呼び名は『委員長』だった。どうして呼び始めたのか、どうして名前で呼ばないのか、まあ正直どうでもいいところではあるのだが、興味はあった。 「いや、別に意味ないならいいんだけど。ちょっと気になったっていうか……」 「俺が副委員長だから」 「え……え?」 「だから、俺が一年五組の学級副委員長で、お前が学級委員長だから『委員長』」  まあ、そうなんだろうけれど、どうしてその呼び名を呼んでいるのか……いや、それよりも私は―― 「名前で呼んでよ。『委員長』じゃなくて私の名前で呼んでよ」  それが一番やってほしいことだった。  桐生陽菜――私にはそんな名前があるのだから。 「そうだよな。お前は名前で呼んでくれてるもんな。悪かったな」 「謝らないで。図々しいこと言ってるのは私なんだから」 「図々しいなんて言うなよ。友達が名前で呼び合うのは普通だぜ」  南雲くんがこっちを向く。少し目が赤い気がするけれど、寒さのせいということにしておこう。 「そうだよな、陽菜」  陽菜――!  私の名前で!  なんかそう呼ばれると照れ臭いけれど、こうなれば私も言ってあげないといけない。 「一斗くん、これからもよろしくね」  こうして私の奇妙な物語は終わった。いや、これから始まるのかもしれない。出遭って、別れて、出会ったのだ。  私の物語は終わった。  そして、私たちの物語は始まりを告げた。
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