第2章 私の出遭いは突然で

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 学期末恒例の大掃除の詳細は委員長の仕事として私が決めることになっている。日程は先生からいくつか提示され、それを私がクラスメイトに聞き、最終的な日にちを決める。担当は出席番号で区切っていて、うちのクラスは三十二人クラスなのでだいたい十一人ずつに分けて、さらに役割を決める。掃除箇所は教室だけなので、床の水拭き担当、掃き掃除担当、机と教卓とロッカーの雑巾がけ担当、黒板とその周り担当……全て出席番号の何番から何番はこれ、という風に私が勝手に決める。みんなもう高校生なので、それが気に食わなくて文句をつける人はいない。いや、それどころか誰が決めているのかさえ知らないのかもしれない。知らなくていいが。ただ、どうせこの役割分担が意味のないものだということは何となく分かっている。単純な話、きちんと清掃をやらないのだ。高校最初の友達作りは大抵席の近い人から始まるようで、出席番号で担当を決めると仲良しが固まる傾向にある。仲良し同士が固まるとどうなるか、想像がつくだろう。先生が見張っていればある程度はしっかりやってくれるのだろうが、うちの担任はそんなことはしてくれない。忙しいとか何とか言って、こういうのは生徒に任せてしまう。大掃除なんて結局、おしゃべりの場でしかなくなるのだ。  しかし、頼まれたからにはやるべきだろう。先生は生徒を頼りにしているつもりなのだから、それに応えてあげなくてはいけない。それを抜きにしても今日は急ぎの宿題もなければ、用事もない。息抜きのつもりでやろう。  歩き出すと、すでに南雲くんはいなかった。別に構わない。彼はただの伝言係だ。仕事を終えてどうしようと知ったことではない。  さて、ようやく帰り道を歩く。学校から家まではそう遠くない。徒歩での登下校がいい運動になる程度だ。私の通学路には大きな公園が含まれている。遊具はないけれどいつでも誰かはいるような、そんな市立公園だ。毎日大きな公園を縦断して、登下校しているのだ。途中にコンビニがあるので、そこで菓子パンやらおにぎりやらを買って軽いピクニック気分で公園にとどまることもよくある。ときには読書を嗜んだりもする。私の楽しみの一つだ。     
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