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久しぶりに見る香苗は、相変わらず美人だった。
地元で人気のある男子は、ほとんどが香苗の元カレだ。
地味な莉子がずっと勇進に憧れていることがバレた時には、香苗におおいにバカにされた。
それにしても、どうして香苗が勇進と一緒にここに来たのだろう。
莉子はイヤな予感がして、勇進を振り返った。
勇進は眉をひそめて、車にいる香苗に顎を突き出す。
「お前だって、知らないやつじゃないんだから、降りてきてもいいんじゃねぇのかよ」
「やだよ、蚊に刺されそう」
「お前の幼馴染だろ」
「は? あんたの、彼女でしょ?」
彼女、を強調して意地悪く言った香苗を睨んで、勇進は舌打ちした。
(なんだろう……? なんか、変な感じ……)
莉子は胸がザワザワした。
「よかったんじゃないの? 莉子、幸せな夢見ながら死んだわけだから。成仏してるでしょうよ」
「やめろよ。ここ、出るって噂あるんだぞ。知らないのかよ……」
「莉子が聞いてるかもってこと? は、バッカじゃないの? 何そんな怖がってるわけ?」
「……なぁ、やっぱお前も降りてきて一緒に謝れよ」
勇進は車の方に歩み寄った。
「はぁ? 冗談でしょ。なんであたしがーー」
「だっておかしいだろ! こんな連続で流産するなんて! あいつの呪いだよ! ばあちゃんもそう言ってた! あいつ、俺たちのこと……恨んでんだよ!」
切羽詰まったような勇進の声に、莉子は衝撃を受けた。
(呪い……? 恨み……? 私…… 何もしてないよ? 勇進先輩、私のこと、そんな子だと思ってたの……?)
勇進の声が胸にリフレインする。
悲しみでいっぱいになった莉子の心に、一つの言葉が浮かび上がった。
(流、産……?)
連続で流産、と、勇進は言っただろうか。
莉子は信じられない気持ちで、二人を見た。
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