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まっすぐな道で、あなたを
(また、来ちゃったな……)
莉子は一人、道端の大きな石に座っていた。
見通しの良い一本道だ。道の両側には野菜畑が広がり、畑の向こうには海が見える。海を臨みながら気持ちよくドライブできる公道として、地元では人気のあるスポットだ。
(今日こそ、勇進先輩に会えるといいな……)
この道で、勇進はバイクの事故を起こした。3年前のことだ。莉子にバイクのことはわからない。でも、勇進に非はなかったと聞いた。
あの日、片側一車線の直線道路で、勇進のバイクはトラックと正面衝突した。
居眠り運転のトラックが車線を越えて、吸い寄せられるように勇進のバイクに突っ込んで行く様子が、トラックに搭載されたドライブレコーダーに記録されていたのだ。
勇進は莉子のすべてだった。
初めての彼氏。初めてのデート。
両親はいい顔をしなかったけれど、1つ年上の勇進が莉子にいろいろなことを教えてくれた。かっこよくて優しい、自慢の彼氏だった。
初めてバイクの後ろに乗せてもらったときは本当に怖かったけれど、莉子の怖がりようを笑いながら、勇進は丁寧にゆっくり走ってくれた。
大きな勇進の背中が温かくて、しがみついていればいつまでもどこまでも、一緒に行けるような気がしたのに。
勇進に置いていかれた莉子は、3年前のあの日から前に進めないでいた。
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