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自動販売機
今日はおばあちゃんが来る日。
まだ自分の名前も漢字で書けないような幼子、孝は、駅に件のおばあちゃんを迎えに行く準備をしていた。
「ハンカチと、DSと、トランプと、えーっと…」
孝は昨日から準備を始めていたのだが、何をカバンに入れるか悩みすぎて、気づけばお母さんに寝なさい、と嗜められていた。
「もう、お母さんが寝ろっていわなかったら良かったのに」
不満を口にするも準備する手は止めない。相当楽しみなようだ。
「そうだ、チョコボール!」孝はリビングへと走り、お菓子箱を弄った。
「あ、孝。チョコボールはないわよ」「なんでさー」「昨日、食べてたじゃない」
孝はプクーっと頬を膨らませたが、怒りの矛先も見つからなかったため、すぐに萎んでしまった。「まあ、いいや。お婆ちゃん、これ好きって言ってたし」結局、そう言って取り出したのはサラダ味のじゃがりこだった。
「いってきまーっす」「はい、いってらっしゃい。お義母さんに、夜ご飯は食べに行くか聞いといてね。お願い」「了解しました!」
ガチャリ。
6月末の昼にしては明るい太陽が孝を照らした。先週買ってもらったピカピカの運動靴が、負けじとそれを跳ね返している。
「しゅっぱーつ」
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