自動販売機

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孝は腕を振り上げた。 駅までの道のりはそう遠くない。孝の足で歩いて、せいぜい5,6分だ。 孝は鼻歌を奏でる。学校で流行っている子供向けアニメの主題歌だ。 律儀に道の右側を通っていると、街路樹のものなのか、大きくきれいな葉っぱが落ちていた。 「おお!きれい!」 おばあちゃんはいつもお土産をくれる。そのお返しに、と思ったのか、孝はその大きな葉っぱを崩れないように、カバンにしまいこんだ。 「てれれれーれっれーてってれー」その嬉しさに、ゲームのファンファーレを口ずさんでしまう。 依然鼻歌を続けていると、急に、後ろから同じような歌声が聞こえてきた。 「ふんふーふふんふ」「ふんふーふふんふ」 「ふっふーふふーふ」「ふっふーふふーふ」 しかも、見事に三度でハモっている。 孝は、声の主を振り返った。「だれっ」 「やっほー、少年」孝の家の隣に住む、高校生の民子だった。 「なんだ、民子か」孝は嫌悪も表すことなくまた振り返り、駅へと向かう。 「ちょ、ちょっとまてまてまて。無反応、ムハンマドー」 「何、民子」やれやれ、といった表情で孝は振り向く。 「どこいくのー?」 「駅に。おばあちゃん迎えに行くんだ」 「へえ。ってか、あの人まだ生きてたんだ」     
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