自動販売機

3/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「生きてるよ!」孝は、それを冗談だと認識できたので、嫌な気はしなかった。「民子は、こんな昼間から、何してるの」 「テストが終わったのよ」民子は、髪をかきあげ、この上ないドヤ顔だ。 「この前漢字テストで100てんとったんだ!」そんな民子の自尊心さえ、笑顔で打ち砕いてしまうから子供というものは怖い。しかもそれで凄い笑顔なものだから、言い返そうにも返せない。 「すごいね…」 「どうしたの、お腹痛いの」 「そうじゃ…ないけど」「ふーん」 「私も行っていい?文さん、長らく会ってないし」 「いいよー」 たかしに なかまが くわわった! 「ちょっと聞いてよー、少年」 「何。集中して歩いてるんだけど」 「なんて無慈悲な!」しかし構わず民子が語りだす。「クラスに、カップルがいたの」 「かっぷるって、男の子と女の子のペアのこと?」 「だいたい合ってる。で、その、男の子の方が遠くの学校に転校しちゃうらしいの」 「転校…?」「ああ、学校を変えること」「ふーん」 「で、その女の子のほうが、私の友達なんだけど」「民子、友達いるんだ」「いるわ」 「その女の子がね、ここ一週間いっつも私に言ってくるの。『悲しい。私、もうだめかもしれない』って」 「?民子だったら、悲しくないの?」     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!