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「そうそう、端にはなぜか自動販売機があったのよねえ。当時はここだけジュースが安くて、毎日通っていた」そこには、電力源がどこなのかもわからないような古びた自販機があった。
メニューは、『オレンジョイ』、『ナミダリア』、『ヘイトマト』、『ダルダルダ』の4つ。
思わず孝と民子も走ってくる。
「ちょ、文さん。ここ、なんか不気味だよ」
「大丈夫よ。それよりあんたたち、ジュースおごってあげるわ」文にはその自動販売機がものすごく懐かしかったようだった。「お母さんに怒られそう」「大丈夫よ」
文は少し興奮気味だ。「さ、選んで。個人的には、安くて美味しい、『オレンジョイ』がおすすめよ」
そう言って文は自販機に向き直る。しかし、そこで目を見開く。「え、『オレンジョイ』が一番高かったかしら…」
民子は早くそこから出たそうだった。「文さん、算数もできなくなったんすか。私には全部おんなじ値段に見えますよ。しかも全部なかなかに安い」
孝は不満げな顔だ。「ちがうよ、二人共。『オレンジョイ』が安くて、『ナミダリア』と『ヘイトマト』が安い。『ダルダルダ』はそれの真ん中くらいかなー」
一同は顔を見合わせ、首をひねる。
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