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一枚ずつ封筒に入れられて、数日おきに博香さんの家に、剥がされた生爪が届けられた。そして同封されていたメモには、
「これは左手の親指の爪です。この男の人はリストラを苦にして自殺しました」
「これは左手の人差指の爪です。この女の人はストーカーに刺されて死にました」
と、ひとつずつ意味不明な説明書きがされていたという。
「この間で両手分の十枚が届いたから、生え換わるまでの半年間位は、もう送られてこないと思うんですけど」
博香さんは弁護士を通してエミリさんのご家族と連絡を取り、正式にエミリさんとの雇用契約を終了し、今後一切博香さんに関わらないように約束させた。
「経営者って、何かと大変ですね」
ショッキングな出来事であっただろうに、変わらず精力的に働く博香さんは、さすが人気サロンのトップネイリストだと感心したが……
話を聞かせてくれたカフェで、カップを持つ博香さんの左手の小指の先に巻かれた絆創膏が赤く滲んでいたのが、少々気にかかっている。
【了】
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