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お手上げのポーズを取った彼女は、同じ日本人のようだ。持っていた和包丁が、机に転がっている。
他にテーブルに有るのは、他に巻物らしきものと、無地の表紙の本だけだ。
「オホンッ、女神様にはお渡しする物があります」
ライルはその巻物のような紙を、仰々しく差し出した。
「これは神託の書。女神様だけが読める、神のお言葉です」
彼女がそれを受け取り、クルクルと巻きを解いた。広げられた紙は、蒼一には白紙に見える。
「……何か書いてあるか?」
「うん。びっしりと」
幸い、これについては老人が説明してくれた。
「そちらには、勇者の目的が記してあると伝えられております」
「何だかいっぱい書いてあるけど?」
「それは、私も女神様たちから聞いた話ですが……。なんでも、勇者様に授ける能力が選べるとか。それが女神様のお力なのです」
力と聞いて、蒼一も興味が沸く。
「それは凄いな。いくつでも貰えるのか?」
「勇者は百の異能を持って、悪を討ち滅ぼす。伝説の基本ですな」
イラッと来た蒼一が、思わずライルの顎目掛けて手を伸ばしかける。彼女の質問が無ければ、筆二本分はいっていた。
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