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壁画だけが存在するこの構造は、つい先程経験したばかりだ。
「また自慢部屋巡りかよ。何回やる気だ」
壁の浮き彫りを見てウンザリする蒼一の袖を、メイリが引っ張る。
「反対にも絵があるよ」
「あれ、本当だ。同じ絵が二枚……」
勇者の業績を讃える間とは、もう一つ違いがあった。
次へ進む扉が、正面に二つ存在するのだ。
「どっちでもいい。適当に選ぼう」
「……待って。この二つの絵、ちょっと違うよ」
「ん? ……ああ、本当だ。メイリ、冴えてるな」
どちらも勇者が雷鳴剣を振るうシーンが描かれ、その雷から魔物が逃げている。
「右は、あー、イノジンが酷い目に遭ってる」
「左はイモジンが虐められてます」
「まさかこれ、記憶力テストか」
三番目の勇者は当然、自分のことだから覚えているだろう。
しかし、十八番目の勇者は、この手のクイズがかなり苦手だった。
「……イモジンだと思う。電気が効くし」
「イノジンですよ。最初のやつだし、よく覚えてます」
勇者と女神の意見が割れたため、決定権はメイリに手渡された。
「え、私? んんー? イモジン、かな。最初のザコって感じで」
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